この記事は、日本で生活や就労を考えている外国人の方や、外国人を雇用したい企業担当者、またはそのご家族に向けて書かれています。
「在留資格」と「VISA(査証)」の違いがよく分からない、在留カードって何?といった疑問を持つ方が多い中、正しい知識を持つことはとても重要です。
この記事では、在留資格・VISA(査証)・在留カードの基礎から、申請方法、更新・変更の注意点、管理のポイント、就労・雇用時に必要な知識まで、分かりやすく徹底解説します。これから日本で安心して生活・就労を始めたい方、外国人採用を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
はじめに:こんな疑問ありませんか?在留カードやビザがよくわからない理由
「在留資格」、「VISA(査証)」そして「在留カード」。
これらの言葉は日本で生活する外国人や、外国人を雇用する企業にとって非常に身近なものですが、実際にはその違いが分かりにくいと感じている方が多いのではないでしょうか。
例えば、「ビザがあれば日本で働けるの?」「在留カードって何のために必要?」といった疑問はよく聞かれます。
この混乱の原因は、日常会話やニュース、多くのWEBサイトなどで「在留資格」と「ビザ」が混同されて使われているが多いからです。
本記事では、こうした疑問を一つずつ丁寧に解消していきます。
この記事で解決できること
- VISA(査証)と在留資格、在留カードの違いが明確に分かる
- それぞれの取得方法や管理のポイントが理解できる
- 自分や家族、雇用予定者に必要な在留資格の種類が分かる
- 申請や更新時の注意点、よくあるトラブルへの対処法が分かる
- 実際の事例やQ&Aで、現場で役立つ知識が身につく
在留資格・VISA(査証)・在留カードの基礎知識
在留資格とは|日本で活動できる「資格」の意味
在留資格とは、外国人が日本でどのような活動(就労・留学・家族滞在など)を行うか、その活動内容に応じて法務大臣が与える「資格」のことです。
日本に入国した後、どのような目的で滞在するのかを明確にし、その目的に合った在留資格を取得する必要があります。
例えば、「日本人の配偶者等」「技術・人文知識・国際業務」「経営管理」「留学」「家族滞在」など、活動内容ごとに細かく分類されています。
在留資格がなければ、日本での滞在や活動は認められません。また、在留資格ごとに認められる活動範囲や期間が異なるため、自分の目的に合った資格を選ぶことが重要です。
在留資格は後述するビザ=VISA(査証)ではありませんが、日常会話やニュース、多くのWEBサイトなどでこの在留資格のことも一般的にはビザと呼んでいます(配偶者ビザ、経営管理ビザ、留学ビザ、家族滞在ビザ等)。
これは通称「ビザ」であって正式には「在留資格」になります。
ビザ(VISA、査証)とは|日本入国時に必要な「許可」の仕組み
ビザ(VISA、査証)とは、日本に入国する際に必要となる「入国のための推薦状」のようなもので、在留資格とは別のものです。
在外公館(日本大使館や領事館)で発行され、入国審査の際に「この人は日本に入国しても問題ありません」と証明する役割を持っています。
ただし、ビザ(VISA、査証)があるだけでは日本に滞在できるわけではなく、入国時に空港などで上陸審査を受け、在留資格が認められて初めて日本での活動が可能となります。
ビザ(VISA、査証)はあくまで「入国許可の推薦状」であり、入国後の就労や活動内容は在留資格によって制限されます。また、短期滞在ビザでの就労は認められていません。この違いを理解することが、トラブル防止の第一歩です。
在留カードとは|中長期在留者への「身分証明書」
在留カードは、日本に中長期間(3か月を超えて)滞在する外国人に交付される「身分証明書」です。
カードには氏名、生年月日、在留資格、在留期間などの情報が記載されており、日本国内での身分証明や、就労・住居手続きなど様々な場面で必要となります。
在留カードは、入国時に空港などで交付され、その後も更新や情報変更が必要な場合は手続きを行います。短期滞在(90日以内)の場合は在留カードは発行されません。在留カードの管理は法律で義務付けられており、紛失や情報変更時には速やかに届け出る必要があります。
ビザ(VISA、査証)と在留カードの違い
項目 | ビザ(VISA、査証) | 在留カード |
役割 | 日本入国の許可証 | 日本滞在中の身分証明書 |
発行機関 | 在外公館(日本大使館や領事館) | 入国管理局 |
必要なタイミング | 入国前 | 入国後・滞在中 |
有効期間 | 入国時のみ | 在留期間中 |
✅ビザ(VISA、査証)と在留カードは、役割も発行機関も異なります。
✅入国までの流れは、まず日本の入国管理局に在留資格認定証明書(COE)交付申請を行い、許可が下りたら、その在留資格認定証明書(COE)を在外公館(日本大使館や領事館)に提出してビザ(VISA、査証)を申請し、ビザ(VISA、査証)が発給されたら日本に入国するという流れになります。在留カードは日本に入国後に発行されます。詳細は在留資格認定証明書交付申請(COE)から入国までの流れ でも解説しています。
よくある注意すべき事例
- 日本に入国すれば自由に働けると誤解している
- 短期滞在で就労しようとする
- 在留資格の範囲外の活動をしてしまう
- 在留カードの更新や情報変更時の届け出を怠る
在留資格と異なる就労や活動をした場合、在留カードの更新や情報変更を怠った場合、罰則、退去強制、再入国禁止のリスクとなるため注意が必要です。
在留資格の種類と特徴|あなたが該当するのはどれ?
日本での活動内容に応じた在留資格
外国人が日本でどのような活動を行うかによって、在留資格は細かく分類されています。主な在留資格と活動内容は以下の通りです。
就労が可能な在留資格
在留資格 | 主な活動内容 |
公用 | 外国政府の大使館、領事館職員などの公的な活動。 |
教授 | 大学や高等専門学校などで教育・研究活動。 |
芸術 | 作家、画家、作曲家などの芸術活動。 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師、僧侶などの宗教活動。 |
報道 | 外国の報道機関に所属する記者やカメラマンなどの取材活動。 |
高度専門職 | 高度な専門能力を持つ外国人の活動。ポイント制。 |
経営・管理 | 日本で事業を経営・管理する活動。 |
法律・会計業務 | 弁護士、公認会計士などの専門的な業務。 |
医療 | 医師、看護師などの医療業務。 |
研究 | 公的機関や民間企業での研究活動。 |
教育 | 小学校、中学校、高等学校などでの教育活動。 |
技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、通訳、営業などの専門的・技術的な業務。 |
企業内転勤 | 海外の事業所から日本の事業所への転勤。 |
介護 | 介護福祉士の資格を持つ外国人の介護業務。 |
興行 | 俳優、歌手、ダンサーなどの興行活動。 |
技能 | 熟練した技能を要する職種(調理師、パイロットなど)。 |
特定技能 | 深刻な人手不足分野での就労。特定産業12分野が対象。 |
技能実習 | 母国への技能移転を目的とした実践的な研修。 |
就労ができない在留資格
在留資格 | 主な活動内容 |
文化活動 | 収入を伴わない学術上または芸術上の活動。 |
短期滞在 | 観光、親族訪問、業務連絡などの短期間の滞在。 |
留学 | 大学、日本語学校などでの教育を受ける活動。 |
研修 | 雇用契約に基づかない実践的な技術・技能の習得。 |
家族滞在 | 就労系や留学などの在留資格を持つ外国人の扶養家族としての滞在。 |
特定活動 | ワーキング・ホリデーやインターンシップなど、個別の活動。 |
就労ができない在留資格を持つ外国人がアルバイトをするには、原則として「資格外活動許可」が必要です。この許可を得ずにアルバイトをすると、不法就労となり、罰則や退去強制の対象となる可能性があります。
身分や地位に応じた在留資格
活動内容に制限がなく、自由に就労できるのが特徴です。
在留資格 | 概要 |
永住者 | 日本での在留期間に制限がない、最も安定した在留資格。 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者、または実子・特別養子。 |
永住者の配偶者等 | 永住者の配偶者、または実子。 |
定住者 | 法務大臣が特別な理由を考慮し、個別に定住を認める資格。 |
在留資格(就労・非就労)・ビザ(VISA、査証)の申請方法と取得の流れ
申請手続き【行政書士への依頼も】
在留資格やビザ(VISA、査証)の申請には、目的や状況に応じた手続きと書類が必要です。
主な流れは、まず在留資格認定証明書の申請(日本の出入国在留管理庁へ)、その後、海外の日本大使館・領事館でビザ(VISA、査証)申請を行います。
在留資格の申請書類は多岐にわたります。在留資格ごとの要件に適合しているか否かで審査がされます。また書類不備や記載ミスは不許可の原因となるため、自身で申請に不安な方は行政書士など専門家に依頼するのも安心です。特に初めての方や複雑なケースでは、専門家のサポートを活用しましょう。
許可・不許可となるケースとその理由
在留資格は申請すれば誰でも必ず許可されるわけではなく、申請者の個人の状況によって異なります。
在留資格の条件に合致していることを申請者が証明することが必要です。
一方、不許可となる主な理由は、在留資格の要件不足、活動内容が在留資格と不一致、過去の違反歴、虚偽申請の疑いなどです。
不許可の場合でも、理由を確認し再申請が可能な場合もありますので、冷静に対応しましょう。
在留期間の更新・在留資格の変更と注意点
在留期間・滞在期間はどれくらい?
在留資格ごとに認められる在留期間は異なり、6カ月・1年・3年・5年など複数のパターンがあります。
自分の在留期間や有効期限は、在留カードで確認できます。期限が近づいたら、入国管理局へ在留期間更新許可申請の手続きを行う必要があります。また、在留期間を超えて滞在すると不法滞在となり、強制退去や今後の入国が難しくなる場合もあるため注意が必要です。
✅在留カードに在留期間が記載されている
✅期限切れ前に必ず更新手続きを
在留資格を変更するには?
在留資格ごとに活動内容が細かく分類されているため、例えば在留資格と異なる別の仕事は出来ません。在留資格を変更したい場合は、入国管理局へ在留資格変更許可申請の手続きを行う必要があります。変更許可申請は新たな在留資格取得と同様に審査時間がかかるため注意が必要です。
在留カードの管理と届出|やるべきこと・注意点まとめ
在留カードの交付・更新・登録の流れ
在留カードは、入国時に空港で交付され、その後も在留期間の更新や資格変更時に新しいカードが発行されます。
在留カードの更新や再交付は、最寄りの出入国在留管理庁で手続きが必要です。更新や登録の際は、必要書類や期限を事前に確認し、余裕を持って手続きを進めましょう。手続きの遅れや不備は、滞在資格の喪失や罰則の原因となるため注意が必要です。
在留カードの情報変更・届出が必要な場合
在留カードの情報に変更があった場合は、速やかに届出が必要です。
例えば、氏名・住所・勤務先・在籍学校などが変わった場合、14日以内に出入国在留管理庁や市区町村役場で手続きを行います。
届出を怠ると、罰則や在留資格の取消しにつながることもあるため、必ず期限内に手続きを行いましょう。また、転職や転校など大きな変更がある場合は、在留資格の変更申請も必要になる場合があります。
✅氏名・住所・勤務先・学校の変更は14日以内に届出
✅転職・転校時は資格変更申請が必要な場合も
✅届出を怠ると罰則の対象
在留カードを紛失した場合
在留カードを紛失した場合は、速やかに最寄りの警察署で遺失届を提出し、その後出入国在留管理庁で再交付の手続きを行います。
就労・雇用時に必要な知識|外国人採用企業・本人向け注意事項
採用前に知っておくべき在留資格確認の流れ
外国人が従事できる業務は、在留資格ごとに就労の可否や活動範囲が厳格に定められています。例えば「技術・人文知識・国際業務」資格で単純労働を行うことはできません。外国人を採用する際は、必ず在留資格の内容を確認しましょう。
業務内容が在留資格の範囲外であれば、不法就労となり、企業・本人ともに罰則の対象となります。採用前に、在留資格が業務内容に合致しているか、在留期間が残っているかをチェックすることが重要です。
就労不可の在留資格でも資格外活動許可があれば定められた時間内でアルバイトが可能です。アルバイト採用の場合は資格外活動許可の有無を確認する必要があります。
採用時には、業務内容と在留資格が合致しない場合は、在留資格変更許可申請が必要です。
海外からの呼び寄せの場合は、業務内容に合致する在留資格認定証明書交付申請が必要です。
また、在留カードの有効性や偽造の有無も確認し、不明点があれば専門家に相談しましょう。これにより、不法就労やトラブルを未然に防ぐことができます。
✅在留カードの原本確認
✅業務内容と在留資格の就労可否・活動範囲の照合
✅在留期間の残存期間確認
✅資格外活動許可の有無確認
✅不明点は専門家に相談
雇用先・本人双方が注意すべき管理・届出事項
外国人雇用においては、雇用主・本人ともに在留カードや在留資格の管理が重要です。
雇用主は、雇用開始・終了時にハローワークへの届出が義務付けられています。
本人も、住所や勤務先の変更時には速やかに届出を行う必要があります。また、在留期間の更新や資格変更の際は、必要書類を揃えて期限内に手続きを行いましょう。
これらを怠ると、罰則や在留資格の取消しにつながるため、日頃からの管理が大切です。
✅雇用開始・終了時のハローワーク届出
✅住所・勤務先変更時の届出
✅在留期間・資格の期限管理
在留資格に関する具体的な事例紹介
実際の申請・更新・変更のケーススタディ
- ケース1:留学生が卒業後に就職し、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ変更
- ケース2:技能実習生が実習終了後、「特定技能」へ移行し、引き続き日本で就労
- ケース3:家族滞在者が資格外活動許可を取得し、アルバイトを開始
実際の現場では、在留資格の変更や更新、資格外活動許可の取得など、さまざまなケースが発生します。それぞれのケースで必要な手続きや書類、注意点を事前に把握しておくことで、スムーズな対応が可能です。困ったときは、行政書士に相談するのが安心です。
専門家(行政書士など)への相談
在留資格やビザの手続きで不安や疑問がある場合は、行政書士や専門の相談窓口を活用しましょう。
行政書士は、申請取次行政書士であれば申請書類の作成や代理申請が可能な専門家であるため、初めての方や複雑なケースでも安心です。また、出入国在留管理庁や各自治体にも相談窓口が設けられている場合があります。相談は事前予約が必要な場合もあるので、公式サイトで確認しましょう。
✅行政書士事務所(申請取次行政書士)
✅出入国在留管理庁
✅各自治体の外国人相談窓口
当事務所は、申請取次行政書士として、依頼者様に代わり在留資格に関する各種申請書類の作成、入国管理局へ申請を代行することが可能です。
これは、ご自身での入管への出頭が不要となる利便性の高い制度であり、多忙な方や遠方在住の方でもスムーズに手続きを進めることができます。
申請取次行政書士とは、出入国在留管理庁に対して在留資格等の申請を「本人に代わって」行うことができる行政書士のことです。
法務省が定めた研修を受講し、所定の効果測定に合格したうえで、入管に届出を行った行政書士に限り、この取次資格が認められています。
まとめ:日本で安心して生活・就労するためには正しい知識と管理が不可欠
在留資格・ビザ・在留カードは、それぞれ役割や取得方法が異なりますが、日本で安心して生活・就労するためには正しい知識と管理が不可欠です。
自分や家族、雇用する外国人の状況に合った在留資格を選び、期限や手続きをしっかり守ることが大切です。疑問や不安があれば、専門家や公的機関に相談し、トラブルを未然に防ぎましょう。